欧州の全球測位衛星システム「ガリレオ」について
ガリレオ(Galileo) は欧州の全地球測位衛星システム(GNSS)であり、多くのサービスやエンドユーザーに改良された測位・タイミング情報を提供している。ガリレオは、ユーザーにより高い精度と正確さを提供するだけでなく、ナビゲーションの改善、緊急時の対応、道路や鉄道の効率化、新しい製品・サービス・雇用の創出を通じて、欧州市民の生活を向上させている。
ガリレオプログラムは、欧州連合が資金を提供し、所有しており、民間の管理のもと、そのデータを無料で幅広い用途に提供している。このプログラムは、既存および計画中のすべてのGNSSと互換性があり、相互運用できるように設計されており、世界中のマルチコンステレーションのユーザーに、よりシームレスで正確な体験を提供している。
責任主体?
欧州連合宇宙計画庁(EUSPA)はガリレオとEU宇宙計画のユーザー指向の運用機関を担当し、欧州連合の持続可能な成長、セキュリティと安全性 に貢献し、革新的で競争力のある上流・下流分野の開発を促進し、世界中のEU宇宙コミュニティ全体と関わることで、EUSPAはイノベーションに基づく経済成長を推進している。
ガリレオと欧州静止ナビゲーションオーバーレイサービス(European Geostationary Navigation Overlay Service)(EGNOS) に関連するEUSPAの目標は以下の通りである。
- GOVSATCOM向けに、長期的かつ最先端の安全・安心なガリレオおよびEGNOSの測位・ナビゲーション・タイミングサービス、および費用対効果の高い衛星通信サービスを提供するとともに、サービスの継続性と堅牢性を確保する。
- Galileo 、EGNOS、コペルニクス (Copernicus) 、GOVSATCOMが提供するデータ、情報、サービスの市場と疏通し、その市場を促進し、発展させる。
- ガリレオ、EGNOS、コペルニクス のための競争力のある革新的な下流産業の発展を促進することにより、EU宇宙計画の社会経済的利益の最大化に貢献する。
- 特に、イノベーション、起業、スタートアップに焦点を当て、加盟国や連合地域におけるノウハウを強化し、より広い欧州の宇宙エコシステムの発展を促進することに貢献する
なぜガリレオなのか?
欧州委員会によると、EUのGDPの11%が衛星航法信号に依存しており、この数字は欧州や世界のビジネスにおけるEGNSSの重要性を示している。
このような衛星位置データへの依存は、他の方法と比較して多くの利点のあるガリレオが、これらのビジネスにとって戦略的に重要であることを意味する。これらの利点の第1は、ガリレオが民間の管理下にある独立したヨーロッパのシステムとして一から構築されたことである。これは、米国国防総省が運営する米国のGPSが、歴史的に選択な可用性により民間の信号にエラーをもたらしてきたのとは正反対である。
ガリレオのもう一つの利点は、他のGNSSと重ならない信号周波数を持っていることである。つまり、GPS、BDS、GLONASSを妨害したり、なりすまししようとしても、ガリレオからの信号に影響を与えることはない。さらに、ガリレオは、都市部でのより信頼性の高い信号、高緯度でのより優れた測位サービス、マルチコンステレーション・アプリケーションでの使用に完全に対応しており、従来のシングルコンステレーション・アプリケーションと比較して、より信頼性の高い正確なサービスを提供するなど、他にも多くの利点がある。
ガリレオの応用分野
衛星を利用したナビゲーションは、現代経済を支える重要な役割を果たしており、GNSS信号は多くの流下市場セグメントにとって不可欠である。ほとんどすべての流下市場は、ガリレオからの測位およびタイミングデータから何らかの恩恵を受けることができますが、EUSPAは10の特定の流下市場に焦点を当てている:消費者向けソリューション、道路・自動車、有人航空、ドローン、海上、緊急対応、鉄道、農業、ジオマティクス、重要インフラ。
このような各市場におけるガリレオのメリットについては、数え切れないほどの例があるが、一般の人にとって最も顕著なのは、2019年から自動運転車へのガリレオの適用が拡大していることであり、このアプリケーションはガリレオが提供する高い精度から大きな恩恵を受けることになる。
自動運転車とは別に、ガリレオの性能向上から直接恩恵を受けるもう一つの主要市場は、捜索救助(SAR)市場である。ガリレオは国際的な捜索救助活動であるCOSPAS-SARSATに最大の貢献おり、緊急遭難ビーコンの位置確認にかかる時間を4時間から10分に短縮している。
ガリレオの性能は、このように広く知られているメリット以外にも、鉄道業界では運行管理や予知保全、農業業界では土壌状態のモニタリングや農機具の自動操舵、さらには証券取引所のような重要なインフラでもガリレオを利用して取引成立時にタイムスタンプを付与するなど、イノベーションを可能にしている。
ガリレオの流下市場市場でのアプリケーションについての詳細は、世界のGNSS市場に関する知識と情報の総合的な情報源となる最新のEUSPA GNSS Market Reportをお読みください。
EUSPAでは、マーケットレポートに加えて、最新の最先端GNSS受信機技術を詳細に紹介するユーザー技術レポートも提供しており、今後数年間の世界のGNSS事情における今後の動向についての専門的な分析を提供している。
EGNOS – 欧州におけるSBAS
安全性が重要な状況では、欧州静止ナビゲーションオーバーレイサービス(EGNOS)が、ガリレオを含むグローバルナビゲーション衛星システムの地域的な拡張を提供するEGNOSはヨーロッパで運用されており、生命の安全に関わるアプリケーションに整合性メッセージを提供し、ユーザーが受信しているナビゲーション信号の正しさを判断できるようにしている。
3機の静止衛星と40以上の地上局のネットワークで構成されるEGNOSは、ヨーロッパで受信したGNSS信号の性能を測定し、これに補強信号を送信することでその目的を達成している。測定されたすべてのGNSS誤差は中央のコンピューティングセンターに転送され、そこで差分補正と整合性メッセージが計算される。これらの計算結果は、静止衛星を使って対象地域に放送され、元のGNSSメッセージの補強(オーバーレイ)として機能している。
GNSS測位情報の精度と信頼性を向上させる信号の継続性と可用性に関する重要な整合性メッセージを提供しさらに、EGNOSは極めて正確なユニバーサルタイム信号も送信している。
マルチGNSS環境におけるEGNSS
ヨーロッパのGNSS(EGNSS)は孤立した環境に存在しているわけではない。多くのユーザ、特にアジア太平洋地域のマルチGNSSホットスポットのユーザにとって、EGNSSの価値の多くは、他のシステムと組み合わせて使用することにある。ここでは、ガリレオをGPS、GLONASS、BeiDouなどのグローバル・システムやQZSS、IRNSSなどのリージョナル・システムと組み合わせて使用することで、位置情報の可用性を向上させることができる。
ガリレオは、GPSなどの他のシステムとの相互運用性を考慮して設計されており、マルチGNSSソリューションに容易に統合することができる。視認可能な衛星の数が増えれば、ナビゲーション情報の可用性が劇的に向上することができる。これは、高層ビルの存在によって個々のGNSSコンステレーションの可視性が制限されるアジア太平洋地域の巨大都市では特に重要である。
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